ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調≪田園≫


ベートーヴェン(1770-1827)は、所謂クラシック音楽というジャンルの中で最も重要な作曲家のひとりで、その輝かしい功績から“楽聖”とも呼ばれています。

 

現在はドイツに位置する(当時はローマ帝国の)ボンという街で生まれた彼は、作曲家としてハイドンやモーツァルトと同じ“古典派”に類されますが、次にくる“ロマン派”への橋渡しをした人物でもあります。

 

そんな彼の作品の中から本日演奏する≪田園≫は、皆さんもよくご存知であろう≪運命≫と同時並行で生み出された作品です。そして、それは交響曲というジャンルに初めて“標題音楽”の要素を大きく取り入れたものであることから、ロマン派の幕開けを暗示した作品のひとつといわれています。

 

文章によってはこの≪田園≫が“標題音楽”自体の始まりなんて言われ方をすることもありますが、実際はオペラやバレエのための音楽はこれ以前から存在していましたし、交響曲というジャンルにおいても既にハイドンが多少のコンテクストをもたせる程度のことは行ってきたという経緯があります。ただ、≪田園≫においては全ての楽章に副題のテキストがついているという点で、非常に斬新でした。

 

1. Allegro ma non troppo 「田舎に到着したときの晴れやかな気分の目覚め」
2. Andante molto mosso 「小川のほとりの風景」
3. Allegro – Presto 「農民たちの楽しい集い」
4. Allegro 「雷雨、嵐」
5. Allegretto 「牧人の歌-嵐の後の喜ばしく感謝に満ちた気分」

 

このように各楽章に副題をつけるという手法は後のベルリオーズ≪幻想交響曲≫に大きな影響を与えましたが、残念ながら交響曲ではそれ以上の大きなストリームになることはありませんでした。代わりにこの系譜はリストに引き継がれ、交響詩というひとつのジャンルの成立に寄与するところとなります。

 

さて、音楽の内容をひも解けば、標題がついてはいるもののやはり古典派の語法は色濃く、特に第1、第3楽章などはベートーヴェンらしい非常にシステマチックな書き方がされています。ただ、第2楽章に見る鳥の鳴き声(フルートがナイチンゲール、オーボエがウズラ、そしてクラリネットがカッコウとされている)や、第4楽章に見る雷鳴・稲光など、自然の描写が随所に散見されるところに、この曲が“標題音楽”たる片鱗が見え隠れしています。

 

ただ、この曲の最も大きな特徴としては、ベートーヴェンの交響曲の中では最も“メロディック”なものである…ということが挙げられましょう。双子作の≪運命≫に代表されるように、筋肉質で圧倒的な構築美を誇る作品を得意とするベートーヴェンにとって、この≪田園≫における“標題”というのは、耳当たりの良いメロディを心おきなく紡ぐための免罪符のようなものだったのかも知れません。

 

決して短い曲ではないですが、最後まで飽きられることなくメロディを堪能していただけるような演奏ができればと思います。どうか最後まで肩肘を張らずに、お聴きいただけますと幸いです。

 

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