ハイドン:交響曲第94番ト長調≪驚愕≫


古典派のオーストリアを代表する作曲家ハイドン(1732-1809)は“交響曲の父”と呼ばれ、番号が与えられているものだけでも104曲もの交響曲を残しています。そして、その最後の12曲(93番~104番)は何とイギリスで書かれているのですが、どうでしょう…ひとまずここで最初の“びっくり”をしていただけましたでしょうか?(そうでもないですかね…)

 

さて、この≪驚愕≫というユニークな通称をもつ作品は、数多くあるハイドンの交響曲の中でも特に有名な部類に入ります。

 

どこが“びっくり”なのかは実際に聴いてみてのお楽しみにしていただきたいので敢えて詳しくは書きませんが、代わりに少し話を変えましょう。…実は、ハイドンの曲は奏者にとっても“びっくり”することが多かったりするのです。

 

例えばメロディの紡ぎ方ひとつをとっても一筋縄ではいかず、ひとつの旋律が収束するかと思ったら新しい旋律が立ちあがってきて…かと思えば裏では和声も予想外の展開を見せたりして、練習中に迷子になることもしばしばです。そんな彼の作風は時に「洗練されていない」という評価をされることさえあります。

 

しかしそれは、長年エステルハージ家の宮廷楽長として雇い主を喜ばせる音楽を作ってきた彼ならではの“職人芸”ではないでしょうか。気に入らない仕事があれば契約破棄も辞さなかった“独立系”作曲家たちとは異なり、決められた納期で家長を、そして客人を驚かせる音楽を書かなければならなかったハイドンの機転が、一見荒削りな旋律や和声に透けて見えるような気がします。

 

なお、この作品がイギリスで書かれた裏には、その頃エステルハージ家で新しく当主になった人物が音楽に理解がなく、ハイドンを放り出してしまった…という背景があります。とはいえ生活に必要な収入は年金で保証されていたということもあったので、彼にとってはむしろやっと時間やその他の制約に縛られず自由に作曲をできる身分になれた…ということでもあったのですが、やはり長年築いてきた作風はそう簡単には変わらず、この曲も結局ハイドンらしい非常にチャレンジングな作品となっています。宮廷に代わってロンドンの聴衆たちは、さぞや“びっくり”させられたことでしょう。

 

本日はそんなハイドンのウィットが少しでも伝わるよう、目の覚めるような演奏ができればと思います。

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